【千里ライフサイエンス】新適塾 未来創薬への誘い ~骨格筋の再生・適応能力と創薬への応用~

セミナー説明

骨格筋は,運動や代謝を司る主たる臓器であり,その代表的な疾患としては遺伝性疾患である筋ジストロフィーが知られている。この疾患を克服する使命が原動力となり骨格筋研究は発展してきた歴史がある。一方で,超高齢化社会における健康寿命延伸のためには,別の側面からの骨格筋研究が求められている。なぜなら筋ジストロフィーは筋線維(骨格筋を構成する主たる細胞)が壊れる疾患であるのに対して,加齢に伴う筋疾患は筋線維の
サイズが減少する疾患(加齢性筋萎縮)であり筋ジストロフィーのような活発な筋線維の損傷を伴わないためである。骨格筋には損傷・萎縮とは真逆の再生・肥大能力があり,その中心として働くのが骨格筋固有の幹細胞―筋サテライト細胞―である。再生時には筋サテライト細胞が増殖・分化・融合することで壊れた筋線維(筋肉の構成する主たる細胞)を再構築し,筋肥大時は,筋線維の核数を増やすことで効率的な筋肥大に関わっている。つまり,再生・肥大におけるサテライト細胞の動態をそれぞれ理解することが,損傷性の疾患・萎縮性の疾患それぞれの治療法開発につながることが期待されている。また,骨格筋には筋サテライト細胞とは異なる間葉系前駆細胞が豊富に存在している。一般的には線維芽細胞と呼ばれる細胞集団であるが,間葉系前駆細胞は筋ジストロフィー,老化,さらには霜降り肉で見られる骨格筋の脂肪化や線維化の原因細胞として我々のグループが同定した細胞である。一方で,筋サテライト細胞による再生・肥大を支持する働きもあるため,二面性を持つ治療標的細胞として近年大きな注目を集めている。<本発表では,このサテライト細胞・間葉系前駆細胞を中心とした骨格筋の再生・肥大機構を我々の成果を中心に紹介させて頂き,筋ジストロフィーや加齢性筋萎縮への異なる治療アプローチとその課題・未来について議論させて頂きたい。

開催日時/申し込み

①2023年10月17日(火)18:00-20:15 開催形式:ハイブリット(開催地:千里ライフサイエンスセンタービル)
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