バーチャルスクリーニングとは

バーチャルスクリーニングは、創薬で使用される計算技術です。ターゲットと化合物間の相互作用をシミュレートし、それらの間の親和性を計算することにより、目的タンパク質に結合する可能性が高い化合物を特定することが可能です。バーチャルスクリーニングは従来のハイスループットスクリーニング (HTS) と比較して、より合理的な創薬アプローチであり、大規模な化合物データベースを選択することにより、迅速かつ低コストな新規活性物質の発見を支援します。HTSの一般的なヒット率はおおよそ0.01%から0.14%であるのに対して、バーチャルスクリーニングのヒット率は1%から20%程度です。

TargetMol社はコンピューターによる創薬支援(CADD:computer-aided drug design)に強みを持っております。当社ではAlphaFold2により高精度かつ高速にタンパク質構造を予測し、当社の化合物データベースに対する仮想スクリーニングサービスを提供しております。ご依頼者様のご要望に合わせてTargetMol社の経験豊富なチームが最適なプランをご提案することで、創薬研究をサポートします。

Drug Discovery

ドッキングベースバーチャルスクリーニング

ドッキング法(DBVS:docking-based virtual screening)はCADDによる創薬において重要なツールです。この方法はターゲットと受容体の結合部位に対する低分子化合物の結合と親和性を予測することを目的としており、研究者が結合のプロセスに関する物理化学的な特徴を理解するのに役立ちます。ドッキング法では大規模な化合物ライブラリーに対してバーチャルスクリーニングを行い、ヒット化合物にランクを付け、低分子化合物がどのようにターゲットを阻害するか仮説を立てることができます。これはリードの最適化において非常に重要です。

TargetMol社では試験結果の正確性を確保するために、通常以下の通り3回のスクリーニングを行います。

  1. Drug-likenessに基づいたスクリーニング
  2. ドッキングベースの仮想スクリーニング
  3. 創薬における経験豊富な科学者によるManualスクリーニング

10年以上経験持つスクリーニングチームが行うManualスクリーニングにより、精度の高い結果を得ることができます。

Molecular docking-based virtual screening

Manualスクリーニングでは、薬物結合部位の立体構造的特性(水素結合、疎水性、親水性など)を考慮しながら、分子ドッキングスコアに基づいて結合親和性の高いヒット化合物を選択します。既存薬の構造活性相関を参照して、同様の分子相互作用を持つヒット化合物を維持するだけでなく、より多くの新規コア構造を持つ化合物をリストアップできるような工夫がされています。

化合物データベース

Topscience database
化合物数:1,200万種類
1,200万種類の合成可能な化合物をコレクションしたデータベースであり、多様なスクリーニングの目的に使用できます。毎年2回データの更新を行うことで、情報の正確性と信頼性を確保しております。また、ほとんどの化合物において在庫を保有しており、スクリーニング後の長期的な供給が可能です。製品の品質は世界中の製薬会社、バイオテクノロジー企業、スクリーニングセンターなど、200以上の研究施設で検証されております。

Topscience diversity database
化合物数:160万種類
Topscience databaseからリピンスキーの法則に基づいて選別された高品質なDrug-likeライブラリーであり、5,000種類を超える骨格が含まれる多様性の高いデータベースです。非常に費用対効果の高いスクリーニングを行うことが可能で、プロジェクトの初期調査にかかるコストと時間を削減することが可能です。

Topscience core database
化合物数:2万種類
Topscience databaseから細胞、組織、個体に生物学的反応を引き起こすことが知られている化合物をコレクションしたデータベースです。ドラッグリポジショニング、細胞誘導、メカニズム研究、ターゲット同定、ポジティブコントロールなどを目的としたスクリーニングに適しています。

お手持ちのデータベースやTargetMol社が販売するライブラリーをデータベースとして使用することも可能です。TargetMol社より試験の目的に合わせた最適なデータベースをご提案させて頂くことも可能ですので、是非お問い合わせフォームよりご相談ください。

ハイプットスクリーニング(HTS)との比較

HTSバーチャルスクリーニング
  • 評価できる化合物の数量が限られている
  • 化合物ライブラリーのコストが高い
  • 結果が出るまでかかる時間が長い
  • 数千万化合物まで短時間で評価可能
  • 化合物の準備は不要
  • ヒット化合物のみアッセイする

TargetMol社の利点

  • 膨大なデータベースが利用可能
  • 10 年間以上の豊富な経験を持つチーム
  • ヒット化合物製品を安定的にご提供
  • 独自のスクリーニング方法で信頼性の高い結果を確保
  • 文献に使える専門性ソフトを使用し、プロ仕様のグラフをご提供

ご注文の流れ

  1. ご要望の確認
    弊社営業担当もしくはお問い合わせフォームへご希望の条件をご連絡いただき、お見積をご依頼ください。
  2. 社内評価
    お申込み内容を確認し、TargetMol社にて受託可能かどうか確認致します。受託可能な場合、プランのご提案、およびお見積りをさせて頂きます。
  3. バーチャルスクリーニング実施
    納期目安:化合物数20,000種類の場合、納期2〜3週間程度
  4. レポートの提出・アフターサービス

    バーチャルスクリーニング成功例

    1. PLK1- SHCBP1阻害剤バーチャルスクリーニング

    背景

    • 有糸分裂キナーゼであるヒトタンパク質 PLK1 は、細胞周期全体にわたるさまざまな生物学的機能において重要な役割を果たしています。このタンパク質は全⻑ 603 個のアミノ酸から構成され、K82、E131、D194 に ATP 結合部位、D176 に触媒部位があります。
    • 研究者A様は、PLK1 キナーゼが ATP を触媒する役割に加えて、SHCBP1因子と複合体を形成することもできることを発⾒しました。SHCBP1 は、細胞の増殖、成⻑、分化に関与するもう 1 つの必須分⼦です。
    • PLK1-SHCBP1 複合体は有糸分裂に役割を果たし、がんの発生の促進と関連付けられています。

    目的

    PLK1 - SHCBP1のタンパク質間相互作用(PPI:Protein-Protein Interaction)を阻害する化合物の発見

    PLK1 - SHCBP1のタンパク質間相互作用

    スクリーニング工程

    17,676 化合物  分⼦ドッキング:
切断実験により、PLK1 (G367-S603)のポロボックス ドメイン (PBD) が SHCBP1 (E355-G562) の構造ドメインに結合することが発⾒されました。 分⼦ドッキング実験を通じて、これら 2 つのタンパク質間の結合界⾯を決定しました。 さらに、結合界⾯を確認し、相互作⽤に関与する重要な残基を同定するために残基変異実験が⾏われています。
    40 化合物  バーチャルスクリーニング:
ソフトウェア分析を通じて、これら 2つのタンパク質の複合体内の複数の結合ポケットを特定しました。 当社技術チームが分析し、タンパク質間相互作⽤(PPI) に影響を与える可能性が最も⾼い結合ポケットをドッキング サイトとして選定ました。 バーチャルスクリーニングに多様な化合物ライブラリー (TargetMol) を使⽤して、選択された結合ポケットと相互作⽤できるヒット化合物を特定しました。
    1 化合物  バーチャルスクリーニングを通じて、最初に 17,0676 の化合物のプールから 87 の潜在的な化合物を特定しました。その後、表⾯プラズモン共鳴 (SPR) 実験を⾏ったところ、これらの化合物のうち 40 種類が活性を⽰すことがわかりました。最終的には、Kd 値 0.467 μM の結合親和性を⽰した天然化合物を発見しました。(#T4S0554 )

    引用元:Shi, Wengui, et al. "Hyperactivation of HER2-SHCBP1-PLK1 axis promotes tumor cell mitosis and impairs trastuzumab sensitivity to gastric cancer."Nature Communications 12.1 (2021): 2812.

    2. MARK4阻害剤バーチャルスクリーニング

    背景

    • パクリタキセルは、さまざまな固形腫瘍の治療に使⽤される有効な薬剤ですが、肝細胞癌 (HCC) 患者では⼀般に耐性があります。
    • 実験結果は、MARK4 の阻害がパクリタキセル耐性に影響を与える可能性があることを⽰唆しています。

    MARK4

    スクリーニング工程

    (A)MARK4立体構造, (B)バーチャルスクリーニングの流れ, (C)ヒット化合物, (D)活性実験

    引用元:Shen, Xianyan, et al. "Discovery of coumarin as microtubule affinity-regulating kinase 4 inhibitor that sensitize hepatocellular carcinoma to paclitaxel." Frontiers in Chemistry 7 (2019): 366.

    3. PRMT5阻害剤バーチャルスクリーニング

    背景

    • 「タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ 5 (PRMT5)」は、ヒストンタンパク質上のアルギニン残基の対称性ジメチル化を触媒することによって遺伝⼦転写を制御し、腫瘍形成において重要な役割を果たします。
    • 「EPZ015666」は、s-アデノシルメチオニン(SAM)結合ポケットとは異なる新規結合部位を有する最近報告されたPRMT5阻害剤です。
    • バーチャルスクリーニングにより、⾮⼩細胞肺がんにおける PRMT5 を標的とする低分⼦の開発に使⽤される新しい⾮SAM競合化合物「#T1551」が同定されました。

    PDB ID:4X61

    SAM

    EPZ015666

    スクリーニング工程

    Topscience Database 1,671,908化合物
PAINS,Lipinski's Rule of Five
Molecular Docking HTVS-SP-XP
1,706化合物
Artifcial Selection 158 化合物
    ヒット化合物の活性実験データ

    ヒット化合物 活性実験

    引用元:Wang, Qianqian, et al. "Identification of a novel protein arginine methyltransferase 5 inhibitor in non-small cell lung cancer by structure-based virtual screening." Frontiers in pharmacology 9 (2018): 173.

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