

補体の機能不全が全身疾患の発症に関与
歯周病と全身疾患の関連も補体で解明可能?
補体系の異常が全身疾患・慢性疾患に関与しているとの報告が相次ぎ、いままでの病因・発症機序の研究では説明がつきにくかったことが、補体系の関与を考慮することにより少しずつ明らかになり、海外では注目を集めています。また歯周病の原因菌の一つとして考えられているPorphyromonas gingivalis(P.gingivalis)が補体の活性化への影響を通してIL-1, IL-6, IL-12 や1)マクロファージの機能を変化させることにより2)歯周病の進行・骨破壊に関与している可能性が示唆されるなど、歯周病の原因菌が補体系に異常を起こすことにより全身疾患を引き起こしたり3)、歯周病の進行に関与している可能性が報告されています。また、P.gingivalisやスピロヘータ感染と心疾患4)、加齢黄斑変性、認知症等の全身疾患の関連が報告されています。現在、補体に着目することにより口腔内感染と全身疾患との関連、病因解明および治療法に新たな知見をもたらすことが期待されています。
弊社ではこれら補体に関連する研究をサポートするツールを多数ご提供しております。
Quidel社からは高品質な補体EIAキット、抗補体モノクローナル抗体を、Chondrex社からは歯周病の原因菌の一つであるP.gingivalisの関連ELISAキットを提供しております。
また、Quidel社では補体に関する学術情報サイト「It's Complementary」を開設しております。
文献情報やニュースのご紹介、ブログなどにより補体に関する様々な情報をご提供しております。
こちらもぜひご利用ください。

引用文献
- J Immunol. 2011 Jan 15;186(2):869-77. doi: 10.4049/jimmunol.1003252. Epub 2010 Dec 13.
- In Vitro Cell Dev Biol Anim. 2017 Aug;53(7):593-603. doi: 10.1007/s11626-017-0164-z. Epub 2017 Jun 20.
- Investigating the Enigmatic Link Between Periodontal Inammation and Retinal Degeneration. AADR 2018 abstract #1353.
- J Periodontal Res. 2010 Feb;45(1):116-22. doi: 10.1111/j.1600-0765.2009. 01209.x. Epub 2009 Jul 8.
補体系とは…
補体系は30種以上のタンパク質分子から構成され、これらが連鎖的に活性化し、生体から病原体を排除する際に抗体および食細胞の能力を補助しています。補体系の主な機能としては①標的細胞、免疫複合体および細胞断片のオプソニン化、②炎症性細胞の動員、③膜侵襲複合体による直接的な細胞破壊などがあります。一連の反応経路は反応をトリガーするものによって古典経路、レクチン経路、第2経路の3つの経路に分かれており、それぞれの経路に特有の補体タンパク質がいくつか存在しますが、最終的には膜侵襲複合体を合成します。様々な補体タンパク質を測定することにより、補体系がどのように促進または阻害されているかモニターすることができます。

補体の関与が報告されている疾患 | 示唆されている補体の関与 |
---|---|
全身性ルプス・エリテマトーデス(SLE) | 抗体-免疫複合体が過剰に蓄積。C1qに対する自己抗体の存在。C1, C2とC4が活動期のSLEに関与 |
加齢性黄斑変性症 | C3遺伝子の変異。局所での第二経路の活性化。C3, C5, B, Dに影響 |
遺伝性血管性浮腫(HAE) | 補体成分C1阻害剤(C1-INH)の欠損によるもの |
虚血再灌流障害 | C3, C5が関与 |
リウマチ性関節炎 | 高濃度のC3, C3a, C5a, and TCC(C5b-9)が観察されている |
溶血性尿毒症症候群 | 補体関連因子の遺伝子異常、補体制御異常 |
夜間発作性血色素尿症 | DAF(CD55)とHRF20を細胞膜に結合させているGIPアンカーの異常。細胞膜上からDAM, HRF20がなくなるため、自己補体が活性化、血管内溶血を起こす |
膜性増殖性糸球体腎炎 | C3が関与 |
アルツハイマー病 | 脳脊髄液(CSF)でC3とC4の上昇を観察 |
ライム病 | マダニに媒介されるスピロヘータ感染症。H因子やH因子様タンパク質-1(FHLP-1)に結合することでI因子を介したC3b分解を促進し、補体活性化を制御 |
アレルギー性喘息 | アレルゲンにさらされるとアナフィラトキシン、C3aとC5aのレベルが上昇 |
歯槽膿漏 | 原因菌がC5aの濃度を調節、マクロファージの殺菌力を低下 |
補体EIAキット
製品名 | 製品番号 | 製品情報 | 関連資料 |
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MicroVue™ Ba Fragment EIA | A033 | 96 test | データシート |
MicroVue™ Pan-Specific C3 Reagent Kit | 20261 | 40 test | データシート |
MicroVue™ C3a Plus EIA (For C3 activation) | A031 | 96 test | データシート |
MicroVue™ iC3b EIA (For C3 activation) | A006 | 96 test | データシート |
MicroVue™ C4a Fragment EIA | A035 | 96 test | データシート |
MicroVue™ C5a EIA | A021 | 96 test | データシート |
MicroVue™ SC5b-9 Plus EIA (For MAC assembly, TCC, C5 and terminal pathway activation) | A020 | 96 test | データシート |
MicroVue™ Factor H EIA | A039 | 96 test | データシート |
Mouse C3a ELISA | TE1038 | 96 test | データシート |