Collagen Hybridizing Peptide(CHP)は組織損傷やコラーゲンのリモデリングなどにより三重らせん構造が崩れ、変性したコラーゲンに結合し、新たに三重らせん構造を形成することで変性したコラーゲンを検出する試薬です。Fluorescein標識(F-CHP)、Cy3標識(R-CHP)、Biotin標識(B-CHP)の3種類をご用意しております。

特徴

  • 動物種やコラーゲンタイプに関わらず、変性コラーゲンに特異的に結合いたします。
  • 抗原賦活化を必要とせず、凍結切片、パラフィン切片どちらでも使用可能です。
  • 抗体と比較して分子量がIgGの2%程度の大きさのため、組織への浸透性が高く、薄片化せずとも染色ができます。

原理

Collagen Hybridizing Peptideの原理

生体内に存在するほとんどのコラーゲンはコラーゲンタイプに関わらず、三重らせん構造を有しています。このコラーゲンはコラゲナーゼによる分解や機械的損傷を受けることで三重らせん構造が崩れ、変性することが知られています。CHPは変性コラーゲンに特異的に結合するプローブです。

F-CHP(Fluorescein 標識)
F-CHP(Fluorescein 標識)
R-CHP(Cy3標識)
R-CHP(Cy3標識)
B-CHP(Biotin 標識)
B-CHP(Biotin 標識)

製品情報

in vitro用コラーゲン検出プローブ(CHP)

標識製品名略称製品番号製品情報関連資料
FluoresceinCollagen Hybridizing Peptide, 5-FAM ConjugateF-CHPFLU60 60 μg データシート
FLU300 300 μg
Cy3Collagen Hybridizing Peptide, Cy3 ConjugateR-CHPRED60 60 μg
RED300 300 μg
BiotinCollagen Hybridizing Peptide, Biotin ConjugateB-CHPBIO60 60 μg
BIO300 300 μg

コントロール用コラーゲン検出プローブ(CHP)

標識製品名略称製品番号製品情報関連資料
FluoresceinCollagen Hybridizing Peptide, 5-FAM ConjugateF-CHPFLU60CTL 60 μg データシート
Cy3Collagen Hybridizing Peptide, Cy3 ConjugateR-CHPRED60CTL 60 μg
BiotinCollagen Hybridizing Peptide, Biotin ConjugateB-CHPBIO60CTL 60 μg

アプリケーション

組織病理学

酵素で分解された後のコラーゲンは熱的に不安定になり、体温で変性するようになります。このような変性したコラーゲンは病的状態下での炎症や組織損傷のマーカー、または生理学的発達における組織リモデリングのマーカーとなります。CHPはほぼ全ての組織に適応しており、心筋梗塞、関節炎、腎炎、繊維症などの幅広い疾患の研究にご使用いただけます。

肺線維症

ミニポンプを介して、ブレオマイシンを様々な期間(1~4週)投与したマウスとPBSを1週間投与したマウスの写真です。CHPのシグナルはブレオマイシン投与後4週目まで増加しています。

肺線維症
疾患肺線維症
サンプルマウス肺
染色F-CHP(赤)
Hoechst 33342(青)

心筋梗塞

CHPは正常な心臓組織には反応していませんが、心筋梗塞後7日目の心臓には強く反応しています。

心筋梗塞
左:心筋梗塞後7日目の心臓/右:正常な心臓
疾患心筋梗塞
サンプルマウス心臓
染色B-CHP+Alexa647標識Streptavidin(黄色)

変形性膝関節症

変性した軟骨には高度に分解されたⅡ型コラーゲンが見られます。

変形性膝関節症
左:変形性膝関節症の関節軟骨組織/右:正常組織
疾患変形性膝関節症
サンプル患者関節軟骨組織
染色F-CHP(緑)
Hoechst 33342(青)

糸球体腎炎

CHPは炎症を起こし、糸球体の損傷したコラーゲンのにみ反応していますが、抗コラーゲンⅣ抗体は組織内全てのコラーゲンⅣに反応しています。

糸球体腎炎
左:糸球体腎炎の腎臓/右:正常組織
疾患糸球体腎炎
サンプルラット腎臓
染色F-CHP(緑)
抗コラーゲン IV抗体(赤)

骨格筋組織の発達

CHPが検出するコラーゲン分解により、骨格筋組織の発達過程が観察できることを示しています。写真はあらかじめ形成されていた軟骨が再吸収され、石灰化した骨に置換されるという、軟骨内骨化の過程を追った写真です。CHPは軟骨内骨化が進行中の骨格組織にのみ、局在しています。

骨格筋組織の発達
サンプルマウス胚(14~18日齢)
染色F-CHP(緑)
Hoechst 33342(青)

肌の老化

9ヶ月齢マウス皮膚の真皮では多量の変性したコラーゲンが見られます。CHPは他にも光老化、皮膚の炎症及び自己免疫性皮膚疾患におけるコラーゲン損傷を検出し、スキンケア製品と成分の有効性と安全性を評価するために用いることが可能です。

肌の老化
左:21日齢 マウス皮膚/右:9ヶ月齢 マウス皮膚
サンプルマウス皮膚切片(21日齢、9ヶ月齢)
染色B-CHP+Alexa647 標識
Streptavidin(黄色)
Hoechst 33342(青)

機械的損傷

コラーゲンは腱、靭帯、骨および軟骨を含む、全ての荷重支持組織における主要な構成要素です。これらの組織への機械的損傷はコラーゲンを変性させ、マクロスケールで検出可能な形態学的変化なしに、病的変化を起こす可能性があります。CHPを使用することで、機械的に引き延ばされた腱線維束コラーゲンの損傷状態を分子レベルで検出することが可能になります。

ラット尾腱束の引張試験

ラット尾腱束の引張試験
左:ラット尾腱束をサンプルに、5, 10.5, 15%と引張率を変えた引張試験を行い、損傷具合をCHPで検出した結果です。引張率が増加するにつれ、コラーゲンの損傷が増え、それに伴いF-CHPの蛍光も増加していることが分かります。
右:応力- ひずみ曲線(黒線)が線形成領域(赤破線)から逸脱すると、ベースラインからCHPの蛍光強度が上がり始めます。これはコラーゲン分子の展開が機械的損傷の開始に対応することを示唆しています。
ラット尾腱束の引張試験
左:引張率15%での引張試験後、SHG(灰色)とCHP(緑)により、多光子イメージングで分析した結果です。CHPの染色パターンは分子レベルのコラーゲン損傷が不均一性を持つことを示しています。
右:引張率12%での試験後、金ナノ粒子結合B-CHPを結合させ、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察した結果です。高密度のCHP結合領域はフィブリル破壊(dバンドパターンの喪失)が起きていることを示しています。

組織の脱細胞化

脱細胞化組織から得られた天然の細胞外マトリックス(ECM)は再生医療に幅広い用途で使用されています。しかし、脱細胞化の手法によりECM の組成や微細構造が変化すると、生物学的活性と組織修復機能にも影響を及ぼします。従来の組織学的染色、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)では行えませんでしたが、CHPは簡単な画像解析で分子レベルの変性コラーゲンを定量的に観察することが可能です。

ブタ膀胱 基底膜複合体の各界面活性剤による脱細胞化の評価

ブタ膀胱 基底膜複合体の各界面活性剤による脱細胞化の評価
4種の界面活性剤(1%SDS、8 mM CHAPS、4%SD、3% Triton X-100)で脱細胞化された、ブタ膀胱 基底膜複合体中のコラーゲンを抗コラーゲン I 抗体(上段)で、変性コラーゲンをF-CHP(下段)で染色した写真です。1%SDSと3% Triton X-100のコラーゲンが変性しており、中でも1%SDSは変性効果が強いことが分かります。

変性コラーゲンの検出

SDS-PAGEでコラーゲンを電気泳動すると、SDSや熱によりコラーゲンが変性します。CHPはこの変性コラーゲンを容易かつ特異的に検出します。ウエスタンブロットのようなメンブレンへの転写やブロッキングの作業が不要な為、時間や手間を節約できます。

SDS-PAGE での検出

SDS-PAGEによる変性コラーゲンの検出
左:段階希釈したⅠ型コラーゲンをSDS-PAGEゲル中でF-CHPを用いて検出した結果、検出下限値は5ngでした。
中央・右:CHPはコラーゲンのタイプを問わず検出できますが、フィブロネクチンやラミニンなどには反応しません。

がんの細胞浸潤

癌の転移で生じる細胞浸潤と遊走は細胞外マトリックス(ECM)による様々なレベルの物理的拘束を通り抜ける細胞の能力に基づいています。癌細胞はプロテアーゼ非依存的またはプロテアーゼ依存的にECMに侵入できますが、プロテアーゼ依存的な細胞浸潤の証明は容易ではありません。 ECM分解の活性はタンパク質分解により蛍光発生する合成ハイドロゲルによって、またはECM修飾プロテアーゼのための蛍光レポーター遺伝子を有する細胞を使用することによって可視化することができます。しかし、合成ハイドロゲルは市販されておらず、レポーター遺伝子のトランスフェクションは多くの初代細胞(例.患者由来細胞)と不適合です。第二高調波発生(SHG)顕微鏡法は標識なしで繊維状ECM構造を可視化するために使用されていますが、分子レベルでECMの分解を検出するのには十分な感度がありません。

がん細胞によるコラーゲンの代謝回転の可視化

がん細胞によるコラーゲンの代謝回転の可視化

CHPはin vitroでの3Dコラーゲンハイドロゲル内において、癌細胞のタンパク質分解移動によって引き起こされる細胞周囲のコラーゲン代謝回転を可視化できます。ハイドロゲル中の分解されたコラーゲンは三重らせんハイブリダイゼーションにより直接CHPで標識され、そのシグナルは蛍光共焦点顕微鏡で容易に観察できます。

DQコラーゲンとCHPを用いた細胞浸潤の比較

DQコラーゲンとCHPを用いた細胞浸潤の比較

MDA-MB-231細胞の培養開始から、1日後の写真です。CHP染色のシグナルは細胞周囲空間で繊維様の形態を示しましたが、 DQコラーゲンシグナルは特徴的なコラーゲン原線維形態を失い、細胞質内に凝集したスポットとして現れました。これはDQコラーゲンの切断された蛍光フラグメントがコラーゲン線維から分離し、細胞によって内在化された可能性を示唆しています。

in vitro用CHPについてよくある質問

in vivo用 sulfo-Cy7.5標識コラーゲン検出プローブ(CHP)

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