コラーゲン抗体関節炎(Collagen Antibody-Induced Arthritis; CAIA)の特徴

コラーゲン関節炎(CIA)はII型コラーゲンに対する自己抗体により惹起されるので、マウスをコラーゲンで免疫する代わりに抗II型コラーゲンモノクローナル抗体のカクテルの単独投与、もしくは、LPSとの組み合わせによって類似の関節炎を発症させることができます。この抗コラーゲン抗体関節炎(CAIA)は、1998年にChondrexがII型コラーゲンのCB11フラグメント上のエピトープを認識する4種類のモノクローナル抗体で構成されるArthrogen-CIA関節炎惹起用モノクローナル抗体カクテルの販売を開始して以来、広く用いられています。

モノクローナル抗体のみによる関節炎発症例(DBA/1Jマウス)
モノクローナル抗体のみによる
関節炎発症例(DBA/1Jマウス)

ここで大切なことは、Lipopolysaccharide(LPS)、Staphylococcal enterotoxin B(SEB)及びM. arthritidis(MAN)などのバクテリア毒素はII型コラーゲンに対する自己抗体と相乗効果を示し、重篤な関節炎を惹起することです。従って、低用量の抗体でマウスに高率に重篤な関節炎を発症させることができるため、モノクローナル抗体カクテルとLPSと組み合わせで関節炎を惹起する方法が治療薬の評価などいろいろな目的のために広く用いられています。

コラーゲン抗体関節炎

(A)コントロール:関節炎惹起能を持たない2種類のモノクローナル抗体を投与されたマウスの関節像を示します。
(A)コントロール:関節炎惹起能を持たない2種類のモノクローナル抗体を投与されたマウスの関節像を示します。
(B)モノクローナル抗体関節炎:関節炎惹起能のある4種類のモノクローナル抗体を投与されたマウスの関節像で、炎症性細胞の浸潤にともなう激しい滑膜炎、パンヌス形成および関節軟骨の破壊など、典型的な関節炎症が観察されます。

CAIAの特徴と利点

  1. 24-48時間以内に重篤な関節炎を惹起します(図1A)。CIAの場合はII型コラーゲンを免疫後、関節炎惹起までに4週間必要です(図1B)。
  2. CAIAはCIAとは異なり限定されたMHCハプロタイプを要求せず、トランスジェニックマウス、ノックアウトマウス、T細胞欠損マウスおよびCIA抵抗性マウスなどを含む多くの系統のマウスに関節炎を惹起することができます。
  3. 関節炎の重篤度はモノクローナル抗体カクテルの投与量に明らかに依存しますので、投与量を増加するとより重篤度の高い一定した関節炎を惹起できます。
  4. このモデルは動物の免疫系に影響を与える完全フロイントアジュバントや不完全アジュバントを用いないので、抗炎症剤の評価やスクリーニングのみならず、環境因子、炎症細胞、サイトカインや遺伝子産物などの個々の病理学的役割を研究するために適しています。

図1:CIAとLPS併用CAIAとの比較

CIAとLPS併用CAIAとの比較
(A)II型コラーゲンに対する4種類のモノクローナル抗体カクテル(2 mg)を0日目にマウスに静脈投与し、さらに3日目にLPS(50 μg)を腹腔内投与しました。関節炎は4日目より惹起され、7-8日目に最高値に達しました。試験薬の治療効果は7日目に明確に観察されました。一方、骨芽細胞の形成や骨破壊はそれよりも遅く14日目と21日目により著明になります。
(B)典型的なコラーゲン惹起関節炎:免疫後4週から関節炎が発症し、7-8週でほぼ炎症のピークに達します。

抗体カクテル投与法とコラーゲン投与法の比較

コラーゲン抗体投与関節炎(CAIA)コラーゲン投与関節炎(CIA)
実験期間7~14日6~8週
マウス血統C57BL/6、DBA1、Balb/c、Transgenic、他DBA/1、C57BL/6
投与方法腹腔内投与、尾静脈投与尾根部皮内投与
関節炎発症率100%60~90%
関節炎スコア10~166~12
必要な試薬関節炎惹起抗体カクテル、LPS免疫用コラーゲン、アジュバント

関節炎モデルマウスを作製する2つの方法の特徴です。CAIA法はCIA法と比べて発症率が高い為、評価するマウスのn数を減らすことが可能です。また、実験期間も短いことから飼育に必要な諸費用や場所を抑えることが出来るため、抗体カクテルは高価な印象がありますが、全体の実験費用としては安くなるケースが多いです。

5クローンモノクローナル抗体カクテル

様々なマウスの系統でLPS併用または非併用に関わらず、さらに効果的に関節炎を惹起するためにChondrexでは従来の4クローンカクテルに1クローンを加え、5クローン関節炎惹起用モノクローナル抗体カクテルを開発いたしました。5クローンカクテル中の3クローンはCB11(CII124-402)中のLyC1(CII 124-290)上のエピトープを認識しており、2クローンはLyC2(CII 291-374)に反応します。

関節炎惹起エピトープはII型コラーゲン分子全体に分布しているのではありません。関節炎惹起抗体のエピトープ認識はマウスのMHCタイプに依存し、例えばDBA/1(H-2q)マウスではCB11、またB10.R(II I H-2r)ではCB8のように、II型コラーゲンのある特定の部分に存在するエピトープを認識します。慢性関節リウマチ患者でも同様で、それぞれの患者の自己抗体は限定されたCBフラグメントと反応します。例えばある患者のグループの自己抗体はCB11に反応し、他のグループの自己抗体はCB8とCB10に反応します。いずれの場合でも患者の自己抗体はコラーゲン分子上に散在する全てのエピトープを認識することはありません。

5クローンモノクローナル抗体カクテル

DBA/1マウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

モノクローナル抗体カクテルをDay 0にマウスに投与し、Day 3に50 μgのLPSをIP投与しました。1.5 mgの5クローンカクテル(IP投与)は2 mgの4クローンカクテル(IV投与)と比較し、さらに安定した重篤な関節炎をDBA/1に惹起しました。5クローンカクテル1.5 mgは4クローンカクテル2 mgに置き換えることができ、また投与経路もIVからIPとすることができます。

DBA/1マウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

Balb/cマウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

モノクローナル抗体カクテルをDay 0にマウスに投与し、Day 3に50 μgのLPSをIP投与しました。1.5 mgの5クローンカクテル(IP投与)は2 mgの4クローンカクテル(IV投与)と比較し、さらに安定した重篤な関節炎をBalb/cマウスに惹起しました。Balb/cマウスはモノクローナルカクテルには感受性ですが、4クローンカクテルでは比較的関節炎スコアがばらつく傾向にありましたが、5クローンカクテルでは安定した重篤な関節炎を惹起することができます。

Balb/cマウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

C-B17/lcrマウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

モノクローナル抗体カクテルをDay 0にマウスに投与し、Day 3に50 μgのLPSをIP投与しました。T細胞欠損C.B-17/lcrマウスはCAIAに非常に感受性であり、4クローンカクテル2 mgのIP投与で重篤な関節炎を発症します。5クローンカクテル(2 mg)は4クローンカクテルに比較して安定的に重篤な関節炎を惹起します。

C-B17/lcrマウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

C57BL/6マウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

モノクローナル抗体カクテルをDay 0にマウスに投与し、Day 3に50 μgのLPSをIP投与しました。C57BL/6マウスはCAIAに低感受性であることから、関節炎を惹起するためには、高用量の4クローンモノクローナル抗体カクテル(8-10 mg)が必要で、その重篤度は中程度の関節炎であり、マウス間でも大きなばらつきがありました。しかし5クローンカクテルは5 mgのIP投与で10 mgの4クローンカクテル(IP投与)と比較し、同等以上の関節炎を安定的にC57BL/6マウスに惹起しました。

C57BL/6マウスにおける4クローン及び5クローンカクテルの比較

関連情報

関節炎惹起抗体カクテルのIP投与およびIV投与の比較

Balb/c、DBA1、C57BL/6の3種の7-8週齢雄マウスを用いて、IP投与とIV投与の差を調査しました。CAIAに対する感受性はマウスの血統により異なる為、高感受性であるBalb/cとDBA/1には1.5 mg、低感受性であるC57BL/6には2.5 mgと5 mgの抗体カクテルを投与を行いました。抗体カクテルの投与を0日目とし、3日目に50 µgのLPSをIP投与した結果です。スコアは1肢0-4点、4肢で最高16点でのスコアで表しております(スコアリング方法は右ページを参照ください)。

CAIA高感受性であるBalb/cとDBA1では、IP投与とIV投与に大きな差は観察されませんでした。C57BL/6マウスにおいてはIP投与に比べてIV投与で高いスコアが得られており、C57BL/6マウスを用いる際はIV投与を推奨します。

LPS 投与量について

関節炎惹起用抗体を用いたマウス関節炎モデルにおいて、マウスのLPSに対する感受性の変化により、LPS投与でマウスの激しい衰弱が起こり、稀に死に至るケースが報告されております。この問題を回避するためにマウス生産者の選択及びLPS用量の検討が必要な場合がございます。右図の通り、2用量において関節炎惹起能に大きく差はありませんが、LPS感受性が低下したマウスの場合を想定し、高用量の50 µg投与を推奨しております。しかし上記理由によりマウスのLPS感受性が高い場合、25 µg投与が適している場合もございます。マウスのLPS感受性が不明な場合は前試験としてLPSのみを単独投与(投与量25 µg/マウスと50 µg/マウスをそれぞれ2匹ずつ)により、マウスのLPS感受性(衰弱状態)を確認し、最適なLPS用量を設定することを推奨いたします。

LPS 投与量について

関節炎スコアリング方法

Chondrexでは1肢4点の最高16点でのスコアリングを推奨しております。スコアをつける際には3つの関節を見ます(A:指、B:甲、C:手首)。こちらの方法では1本でも指関節の炎症が認められた場合にはスコアが1となります。
論文によっては指関節の炎症を起こした本数(指5本)をカウントしているものがありますが、手首、甲、指3本に腫れが認められるような重篤な状態と、指5本だけが腫れた状態とが同じスコアになってしまうことを避ける為、このようなスコアリング方法を採用しております。下記の写真と併せてご参照ください。

関節炎スコアリング方法

CONV 環境における関節炎惹起能の低下

CONV環境においてマウスのCAIAへの感受性低下について検討しました。

実験条件:
Balb/cマウス(7-8週齢、雄、5匹/グループ)

マウスは入手後にSPF環境及びCONV環境で3週間飼育し、Day0に1.5 mgのカクテルをIP投与、Day3にLPSを投与し、Day0、3、5、7、10、14にマウスを観察しスコアリングを行いました。

SPF条件下で飼育されたマウスは良く関節炎を発症したが(紫) 、CONV条件下のマウスはSPFマウスに比べて、約60%程度の関節炎スコア(青) であった。この低い関節炎スコアはLPSの用量を変更しても(緑)、ロットを変更しても (赤)認められ、グループ間で差が認められなかった。CONV環境のマウスでは全く発症しないという例もある為、抗体カクテルを用いたモデルマウス作製はSPF条件での実験を強く推奨いたします。

製品番号製品名容量LPS価格詳細情報
53010関節炎惹起用
モノクローナル抗体カクテル
10 mg
(10 mg/ml)
1 ml
(0.5 mg/ml)
¥140,000データシート
53040関節炎惹起用
モノクローナル抗体カクテル
40 mg
(10 mg/ml)
3 ml
(0.5 mg/ml)
¥540,000データシート
53100関節炎惹起用
モノクローナル抗体カクテル
100 mg
(10 mg/ml)
7 ml
(0.5 mg/ml)
¥1,300,000データシート

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